4月半ばになりました。満開だった桜も散り始め、新緑の季節を迎える時期になりましたね。
そのような中、高齢者向けNISA(プラチナNISA)の制度導入の検討についてニュースがあったのですが、違和感を感じたためお話したいと思います。
違和感を感じること
出典先『時事通信』の記事にこのようなことが書かれていました。途中必要な箇所を抜き出しております。
▶︎ 金融庁が、高齢者向けの少額投資非課税制度(NISA)新設を検討していることが16日、分かった。運用益の一部を毎月受け取れる「毎月分配型」の投資信託を対象に加え、年金などと合わせ月々の生活費に充てたい高齢者のニーズに応える。
▶︎ 高齢者向けの名称は「プラチナNISA」とし、65歳以上に限り毎月分配型投信を解禁する案が出ている。昨年1月に始まった新NISAでは、運用益を再投資に回して長期的な資産形成を促す観点から、毎月分配型は除外されていた。
出典先:高齢者向けNISA新設検討 未成年に対象拡大も―金融庁(時事通信 経済部より)
この記事を読んで次の3点を感じました。
▶︎毎月分配型の投資信託は手数料が割高で割に合わない
▶︎お金を増やすことも大事だが、使うフェーズも重点に置いた方が良いのでは?
▶︎現行の新NISA制度で十分なのでは?
そもそもお金を使うフェーズではないのか
まずはお金を増やすことも大事だが、年齢のことを考えればむしろお金を使うフェーズも重点に置いた方が良いのではないかと思うことです。
多くの方は将来の老後生活に備え、長期でインデックス投資をされる方が多いことでしょう。それは若い時期に初め、30〜40年経過してから取り崩されるイメージの方がほとんどだと思います。
ではご年配の方はいかがでしょうか。若い方と比べても健康寿命が短く、いつ人生に終わりを迎えるか分かりません。そのような状況で今まで資産運用を経験されたことがない方が投資を始めると多くの方は失敗に終わる可能性があります。
むしろ短い健康寿命をいきいきして生きていくためには、やはりお金を使うことも考えないといけません。あの世にはお金は持っていけないからですね。
それにこのプラチナNISAを新たに設けなくても、そもそも去年2024年から始まった「新NISA」制度で合計1,800万円までを元本に運用益を非課税で運用できるようになっております。
よほど稼ぎが多かったり、徹底的に倹約して貯金されている方だったらこの枠を埋められるかもしれませんが、世間一般的には難しいので、現行NISA制度のみで十分に感じます。
そう考えればプラチナNISAは果たして利用される方が増えるのか否か疑問に感じます。
毎月分配型の投資は割に合わない
次に信託報酬の手数料が割高な「毎月分配型」の投資商品を組み込むことに疑問を感じております。
信託報酬とは対象商品を運用するにあたる手数料を指しまして、その利率によっては運用利回りに大きく影響を及ぼします。
例えば投資初心者の方でも利用しやすいインデックス投資商品「eMaxis Slim 米国株式(S&P500)」の場合、信託報酬は年率0.0814%でして、運用中にて発生する手数料が非常に低いです。
対して毎月分配型投資信託である「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」の信託報酬は年率1.7270%。とても割高です。
仮に上記2商品を運用利回り&配当利回りセットで年率7%で同じように運用できていたとしたら、「eMaxis Slim 米国株式(S&P500)」だと手数料差し引いて約6.9%の利益が生まれます。
対して「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」だと約4.3%のリターンになり、長期運用にあたって数十年後の評価額に大きな差が生まれてしまいます。
金融庁がどういった経緯で毎月分配型投資商品も組み込むのか分かりませんが、もしもNISA制度を用いて資産運用されるなら慎重に選びたいところです。
投資する前にあなたの今後のライフプランを立ててみよう
投資経験が浅はかだったり、一度もされたことがない方が何も勉強せずにあらゆる投資商品に手を出すのは危険です。そしてそもそも今の年齢とライプスタイルで本当に資産運用が必要なのかを客観的な目線で判断することが大切です。
「なぜ投資してみたいのか?」
その理由がただ単に「定年退職してからも安定的に資産収入を得たい」という目的で退職金・貯金のほとんどを投資に回して損失を出しては、老後に計画していた旅行等の出費に充てられなくなったり、悠々自適な生活は叶わずして寿命を迎えることでしょう。